審査委員長 「月刊ニュータイプ」編集長/矢野 健二
昨年度の総評を継承して述べるならば、今年度もまた、日本のアニメーションは転換期を経験しているといえるでしょう。この転換期のキーワードとしてあげられるのがテクノロジーという言葉です。作品を作る手段という意味において、また作品の主題という意味において、テクノロジーの問題が前景化してきています。そのような転換期を象徴する作品が「イノセンス」でした。「スチームボーイ」もまた、産業革命という新たなテクノロジーの勃興期を舞台に人と技術の問題を描いた作品でした。「鋼の錬金術師」の錬金術をテクノロジーと言い換えると、これもまた魂の練成という「イノセンス」にも一脈通じるテーマを内包した物語です――と言ったら、いささか牽強付会ですが、昨年の「ガンダムSEED」に続き、あまたの女性ファンを獲得したという点でも素晴らしい作品でした。作品を提供する手段もテクノロジーの発展によって変動しています。受賞した作品のクオリティーやアイディアは一級品ですが、パッケージ部門、ネットワーク部門という賞の設定が時流にそぐわなくなりつつあるのではないか、という疑問も審査委員会では論じられたこともご報告しておきます。